「生産力」良いお茶を育てる大地へのこだわり

お茶ができるまで~茶畑編~

  • 肥料・土作りのイメージ肥料・土作り
  • 防霜のイメージ防霜
  • 一番茶摘採のイメージ一番茶摘採
  • 荒茶合組のイメージ荒茶合組

良い茶葉は作り手次第

良い茶葉は、良い茶の木に育ち、良い茶の木は良い土に育ちます。そして、それらはすべて「良い作り手」の真心に委ねられています。市川園では創業から「お茶を買うなら人を買え」の教えを守り、牧之原台地の茶農家さんを中心とした静岡県産の上質なお茶にこだわっています。

茶の木は家族、心を砕く。

肥料・土作りのイメージ

「茶の木は家族」と茶農家さんはいいます。寒さが緩み、お茶の芽が動き始めれば肥料をやり、新芽の大敵となる霜を寄せ付けないよう「防霜ファン」を動かす。待ちに待った「一番茶」を摘んだ後も、二番茶、三番茶に向けた準備が欠かせません。そして、ようやく秋を迎えると、次は土の元気を回復させる作業など、来年に向けた準備が続きます。大切な「家族」のため、茶農家さんに休日はありません。

一番茶摘採のイメージ

待ちに待った「一番茶」。

うぐいすの声が山あいにこだまする頃、緑鮮やかな新芽のじゅうたんで茶畑がおおわれると、いよいよ茶摘みの時季の到来です。静岡では4月下旬から八十八夜を挟んで5月中旬頃までに摘まれた新芽でつくるのが「一番茶」。茶の木が長い間蓄えた養分の約70%が含まれている最高の茶葉です。市川園では一番茶にこだわり、毎年最上の一番茶を提供してくださる茶農家さんから原料を仕入れています。

茶農家がこだわる「荒茶づくり」。

荒茶合組のイメージ

摘んだ茶葉は鮮度が落ちないうちに「荒茶」に加工するため、「蒸し」の工程に入ります。静岡特産の「深蒸し茶」は、牧之原台地で採れる肉厚な茶葉を美味しく飲めるよう、普通の煎茶より2、3倍長く蒸したもの。深く蒸すことで、茶葉は細かく砕けますが、鮮やかな水色とまろやかな味わいに仕上げてくれます。蒸し時間は機械で制御されていますが、茶葉の状態は天候などで左右されます。その時々に最適な蒸し時間を茶葉を見て決めるのがプロの技。その後、乾燥されながら揉み上げられる茶葉の乾燥具合や香りを長年の経験できめ細かく確認しながら、最上の「荒茶」へと仕上げていきます。

プロフェッショナル対談

生産者 × 茶師こだわりと情熱の相乗効果

生産者あっての茶師であり、生産者もまた茶師の期待に応え、
ベストを尽くすことに情熱を傾けます。
そんな両者がお茶づくりに携わる者としての誇りについて語り合いました。

茶師:美澤信人・藤森一則と生産者:杉村敦志・大塚勝博の写真茶師:美澤信人・藤森一則(市川園)
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生産者:杉村敦志・大塚勝博(島田市・谷口原茶農業協同組合)

地の利は十分。生産者:大塚勝博(島田市・谷口原茶農業協同組合)

山あいなどの畑では日照時間が短いため、全般的に軽めの味ができ上がります。一方、平坦な牧之原台地にある、このあたりの畑では日照時間が長い分、強いお茶ができます。つまり市川園さん好みの「深蒸し」という、うんと蒸して渋味をなくす製造にむいた生葉ができる、そんな「地の利」がここにはあります。ちょうど150年前、元幕臣たちが広大な牧之原の開拓に着手し、以降お茶を開墾して茶畑を作り、その後先輩方がやぶきた茶を植え、深蒸茶を始めてから飛躍的に発展してきた歴史が、この地には息づいています。私自身、初めてお茶に携わった時、一枚一枚の茶葉がお茶に変わっていく様を目の当たりにして感動を覚えました。先人たちが土壌づくりから苦労を重ね積み上げてきた牧之原のお茶に誇りを持ち、後世に受け継いでいく心構えは、ここでお茶を栽培する者全てが備えています。歴史を土台に、手塩にかけて育てたお茶なので飲料品としてのお茶の仕上げは「プロに託したい」。そこは数十年以上の取引がある茶師集団・市川園さんだから、安心して娘を送り出す気分ですね。

大塚勝博の写真

その日、その時一期一会の仕上げを。茶師:美澤信人(市川園)

今年の一番茶の摘採日を決める「定点調査」は、あいにくの雨模様でしたが、そのことも、お茶が大地という自然に育まれた恵みの産物であることをあらためて理解するための天候だったのかもしれませんね。茶畑で確認した新茶の生育状態についてですが、先ほど今日の収集データをいただいたところ、昨年と比べ芽数(がすう:茶木の一定の広さの中に生育している新芽の数)が多い傾向のようなので、昨年とはやや傾向が違う新芽になりますね。「お茶は毎年違う」といいますが、まさに今年も真っ白な気持ちでお茶と向き合う準備を、今日の調査結果を得たことで、すぐに頭の中で始めました。生葉を乾燥させる際の蒸し方は変わってくるか?蒸しのとおり加減はどうか?そこで生まれる荒茶はどんなものだろうか?いろいろと想像し今年のお茶づくりのイメージに想いを馳せると、茶師としての本分でしょうか、気持ちも高揚してきます。その日のお茶は、その日その時しかないものなので「一期一会」。だからこそ、茶葉の個性をくみ取って良い部分を最大限に活かした美味しいお茶に仕上げる使命を感じます。

美澤信人の写真

生産者と茶師たちの写真

すべては、一番茶に。生産者:杉村敦志(島田市・谷口原茶農業協同組合)

先ほど美澤さんから、今日の定点調査を受けて、今年の生葉の蒸し方についての話題がありました。私は現在、この組合の工場で生葉を荒茶にする工程を担当しているのでお話させていただくと、蒸す過程では蒸す時間もそうですが、蒸し機の中で攪拌(かくはん)を行うほか様々な条件があって、それぞれのバランスをみます。そしてバランスを的確にみるためには「強い目」がないといけない。その目を持っていないと選択肢が狭まるので、いろいろな方法を考えながら、日々強い目を養っています。私としては、一番茶の摘採の日のために1年間仕事をしているといっても過言ではないです。考えられる最高のコンディションで、その日を迎える。そしてお茶と向き合う醍醐味が私にとってなによりのやりがいになっています。プライベートの話になりますが、中学1年生の息子がいてそろそろ進路を決めていく時期にさしかかっています。親として、またお茶に携わる職業人として、私の仕事が素晴らしい仕事であることを息子に見せたいという一心で、誇りを持ってやっていきたいと思っています。

杉村敦志の写真

生産者の魂を預かっている。茶師:藤森一則(市川園)

谷口原茶農業協同組合さんとは、市川園がお茶を取り引きせていただいてから、随分長いおつきあいになりますね。ですからついつい、こちらのトレードマークの「丸谷(まるたに)」さんと呼んでしまうほど近い存在に感じています。毎年良い荒茶をご提供していただいていて、本当に市川園のことをよく分かっていただていると感謝します。大塚さん、杉村さんをはじめ、こちらの生産者には全幅の信頼を置いていますし、お茶に対する熱心さ、ひたむきな人柄が「まるたにさん」のお茶にあらわれていますよ。後は、私たちが最善を尽くして仕上げるのみ。社内では以前から「お茶は預かっているんだ」、「お茶を仕入れで買ってきたイメージでやるな」と言います。目の前にあるお茶は、生産者の方たちの魂が形になったものなのだから、丁寧に神経を研ぎ澄まして大切に扱いなさいという戒めであり、茶師としての技を磨くとともに、お茶に精一杯の愛情を注ぐことで初めて素晴らしいお茶を仕上げることができると強く感じています。

美澤信人の写真

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